糖尿病の大規模臨床研究

あなたが受けている(行っている)治療の根拠
 糖尿病の治療は長く続きます。
 毎日、毎食、食べる量や栄養バランスに注意したり、運動を心掛けたり、定期的に通院をしたり、薬を内服・注射したり、こういった治療をずっと続けていくのを‘わずらわしい’と思われることもあるでしょう。このようなわずらわしさを感じつつ、「それでも治療を続けていけば必ず効果がある」と信じるに足る、確かな根拠はあるのでしょうか?
 ご自身が受けておられる(行っている)治療にどのような意味や理由があるのかを理解している場合と、そうでない場合とでは、治療への心構えに差が出てくるでしょう。そしてその差はおそらく、糖尿病全体のコントロール状況の差として現れてくるのではないでしょうか。
 このコーナーでは、ご自身が受けておられる(行っている)治療にどのような根拠があるのか、そして治療を継続することがどうして有意義なのかを知る手掛かりとなりうる、多数の患者さんを対象に国内外で行われた、糖尿病の治療に関するさまざまな臨床研究の成果をご紹介いたします。

1. DCCT

より良い血糖コントロールは本当に合併症予防に有効か?

2. EDIC(1)

良い血糖コントロールをある期間続けると、その期間のあとも効果が継続して現れる!(細小血管合併症の検討)

3. EDIC(2)

良い血糖コントロールをある期間続けると、その期間のあとも効果が継続して現れる!(心血管疾患の検討)

4. DPP

薬よりも生活習慣改善のほうが、糖尿病発症予防効果が優れている

5. Kumamoto study

国内で2型糖尿病の患者さん対象に行われ、血糖コントロール指標の根拠ともなった調査研究

6. UKPDS(1)

1型糖尿病だけでなく2型糖尿病でも厳格な血糖コントロールが合併症抑制につながる

7. UKPDS(2)

血糖コントロールと厳格な血圧コントロールが合併症抑制につながる

8. Funagata Study(1)

日本における糖尿病やIGTの頻度が明らかに

9. Funagata Study(2)

動脈硬化は糖尿病発症前から進行している!

各調査の概要

名 称 対 象 目 的 結 果
DCCT アメリカとカナダの1型糖尿病の患者さん1441人 従来のインスリン療法と強化インスリン療法で、合併症の現れ方に差が現れるかを調べる 強化インスリン療法は合併症の発現・進行を抑制した
EDIC(1)
EDIC(2)
DCCT に参加し、調査終了後も引き続き協力することに同意した患者さん DCCT と同じ ある期間、強化インスリン療法で良いコントロールを行った結果、その後7〜8年その効果が継続した
DPP アメリカの糖尿病発症ハイリスク(境界型、糖尿病予備群)の人3234人(3819人) 生活習慣の改善や薬の服用によって糖尿病発症を抑制できるかを調べる 生活習慣の改善、薬の服用のいずれも糖尿病発症を抑制したが、生活習慣の改善のほうがより効果が高かった
熊本スタディ インスリン療法をしている国内の2型糖尿病の患者さん110人 従来のインスリン療法と強化インスリン療法で、合併症の現れ方に差が現れるかを調べる 強化インスリン療法は2型糖尿病の患者さんの場合も合併症の発現・進行を抑制した
UKPDS(1)
イギリスの2型糖尿病患者さん5102人 食事療法や薬物療法による血糖・血圧のコントロールは、合併症の抑制に効果があるかを調べる 血糖コントロールは明らかに合併症を抑制し、かつ血圧をコントロールするとさらにその効果が高かった
MRFIT 高血圧や高脂血症、喫煙などの冠動脈疾患(心臓の血管の病気。狭心症や心筋梗塞)危険因子を複数もつアメリカの患者さん1万2866人 冠動脈疾患の危険因子に対し降圧薬の服用と生活療法によって、冠動脈疾患の発症を予防できるかどうかを調べる この調査の調査期間(7年)ではあまり差は生じなかったが、それ以後の追跡調査を含めた検討結果からは、冠動脈疾患危険因子に対して治療することで、冠動脈疾患の発症や死亡率が低下することがわかった。また、糖尿病の患者さんは冠動脈疾患や脳血管疾患による死亡率が糖尿病でない人の数倍高かった
DECODE ヨーロッパで糖尿病の有病率について調べた13の調査研究をまとめて評価検討 糖尿病を診断する際に、ブドウ糖負荷後の血糖値も考慮するか、あるいは空腹時の血糖だけで診断してよいかを調べる 空腹時の血糖値のみでは、心臓や脳の血管の病気を起こしやすくなる糖代謝異常(境界型、糖尿病予備群のほか、一部の糖尿病も含まれれる)を見逃してしまうことがわかった
舟形スタディ(1)
舟形スタディ(2)
山形県舟形町の40歳以上の人2651人 糖尿病の有病率、および、糖代謝異常と心臓や脳の血管の病気の関係を調べる 糖尿病の有病率は40歳以上で10.4%。糖尿病は、心臓や脳の血管の病気の危険を約3倍高める。また、糖尿病ではなくても糖代謝異常(境界型、糖尿病予備群)の段階でも、心臓や脳の血管の病気の危険が高い
野田先生顔写真

監修: 野田 光彦
国際医療福祉大学市川病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 病院教授


プロフィール
昭和47年岐阜県立岐阜高校卒業
昭和47年東京大学理科 I 類入学
昭和51年東京大学工学部電子工学科卒業
昭和53年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(電気工学)
昭和53年東京大学理科III類入学
昭和59年東京大学医学部医学科卒業
平成元年自治医科大学総合医学第一講座・内分泌代謝学講座 助手
平成7年コーネル大学薬理学部門 Visiting Professor(平成9年帰国)
平成12年東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科 助手
平成13年朝日生命糖尿病研究所 主任研究員
平成16年虎の門病院内分泌代謝科 部長
平成17年国立国際医療センター 臨床検査部長
平成18年財団法人 国際協力医学研究振興財団 糖尿病予防のための戦略研究プロジェクト推進部長を兼務(平成25年まで)
平成19年国立国際医療センター(現:国立国際医療研究センター)病院 糖尿病・代謝症候群診療部長(平成24年まで)
平成20年国立国際医療(研究)センター 糖尿病情報センター長(併任;平成28年3月まで)
平成22年国立国際医療研究センター病院 部長
同 研究所 糖尿病研究部長(併任;平成28年3月まで)
平成28年埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科 教授(平成31年3月まで)

平成31年4月1日より上記現職

博士(医学)、工学修士
日本内科学会 認定内科医、同総合内科専門医
日本糖尿病学会 学術評議員、同糖尿病専門医・指導医、
日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン策定委員会 評価委員長
日本内分泌学会 評議員、同内分泌代謝科(内科)専門医・指導医
日本肥満学会 評議員、同肥満症専門医・指導医
日本高血圧学会 高血圧指導医
日本病態栄養学会 評議員・病態栄養専門医
日本糖尿病情報学会 理事
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会 代表理事

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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